小川糸「今日の空の色」   不便さの中に幸せを

このブログでは読んで面白かった本やオススメの本を紹介したいと思います。

少しでも気になって読んでみようと思う人がいたら嬉しい。面白かった本や映画は誰かに教えたくなりますね。そんなコーナーになればと思います。

今回は小川糸さんの日記エッセイ「今日の空の色」を読んで、とてもほっこりした気持ちになったので感想を書いてみようと思う。

実は小川糸さんの名前を知ってはいたものの、まだどの本も一度も読んだことが無く、この「今日の空の色」という日記エッセイが初めて読む本。

いつも作家さんのエッセイを読むときは初めにその作家さんの小説を読んで好きになり、もっとその作家さんの「人となり」を知りたくてエッセイを読む順番にしているけれど、今回このエッセイを手に取ったのは鎌倉の生活について書かれたエッセイだったから。

是枝監督の「海街daiary」という鎌倉を舞台にした映画を見て、その素敵な風景の鎌倉に憧れがずっと胸にあったことがこの本を手に取った動機だと思う。

小川さんは鎌倉の山沿いの古い家を借りて夏に一人暮らしをする。そこは小川にホタルが見れるほど自然豊かで、東京との暮らしとはうって違い、夜はしっかりと暗く、虫の声が遠くから聴こえるほど静かな場所。テレビも携帯もラジオもない、小川さん曰く「キャンプのような生活」のなかで暮らしている。

時には夕暮れ時に屋上に登り、鳥の声を聴きながら屋上宴会と称しビールを飲む。やがて夜になり空を見上げれば満天の星空がある。そこには都会では味わえない景色がある。

小川さんはこのテレビも電話も掃除機もない不便な暮らしを不便とも思わず、理想郷として幸福を感じている。この本を読んで本当の豊かさが何か教えて貰ったような気がする。自分も気がつけば日常の便利さに甘え、また毎日の忙しさに心とらわれ、普段空を見上げる余裕すら見失ってしまっていたように思う。

「何もない」という不便さの中には実は沢山の気付くべき自然や人とのふれあいの中にある幸福が存分に含まれている。その当たり前のようだけれど忘れていた日常をこの本は教えてくれる。

手に取った小川さんの初めての本がこの本で良かった。今度は他の作品も読んでみようと思う。

著者  小川糸
出版社 幻冬舎文庫

今日の言の葉

「何もない」という不便さの中には、便利さ以上の幸福がある。